いつだったか、大先輩Y氏が楽屋で「小説家ってえのは肝が据わってるんだ」という話をした。「何でかって言うと小説家は最終職業だからなんだよ。元ボクサー現在小説家とか元銀行員現在小説家とかはいるだろ?でもその逆はないよな。だからさ、小説家はもうあとがないんだ。これしかもう俺(私)には残された道は無いというところまできちゃってるから腹が据わっちゃってるんだ。」なるほどなー。たいへん感心。私にはまだ小説家という道が残されているのだ。なんでこんなことを言うかというと人生何が起こるかわからないでしょ。金正日が核を使うかもしれないし、東海沖大地震、富士山爆発、あるいは躓いてころんで頭打って死ぬかもしれない。死ねばいいけど打ち所が悪くて指が動かなくなるということもあるのだ。そうするとよけいに困るでしょ私は。巨匠前田憲男氏は2度左手が動かなくなったことがあった。一度は東京文化会館でのコンサートの前。急に「左手の代わりをやれ」と電話。ご本人は別に落胆した様子もなく平然としていて「山下洋輔のまね!」とか言いながら拳骨奏法までしたりして。2度目は一緒に演奏していたウインドブレーカーズのメンバーさえ気づかなかったそうだ。大アレンジャーであるからしてうまいこと左を使わないように弾くんだろうけど。「最近は指揮のほうに興味があるな。」とか言うし。かといって「ピアノ練習しなきゃ」とも言うけど。こういう方は例外と見ていいと思いますが、私としては、まあ、う~ん。例外を見習って「どうなろうと平気です」ってカンジでいなくちゃいけませんね。