よく言われることに「好きな音楽を職業にできていいですね」。
「はい!」と答えはするがいいと思ったことは無い。だいたい好きな音楽というのはそれほど無いのだ。私は死ぬほどジャズが好き!ではないし。オリジナルを書いてはいるが、いつも演奏したいと思ったことはないし。ビートルズが好きだといってもコピーバンドで演奏したいとは思わないし、歌が好きでも歌判が好きかと言って好きではないし。
だいたい好きな音楽は音楽全体のほぼ3パーセントか?あとの97パーセントはどうでもいいわけである。
音楽が職業というのはイコール好きな音楽をいつも演奏できるというのとは違うのです。と、私は思う。
好きな音楽を演奏するのはアマチュアでいるのが一番です。
プロとして演奏が上達すると「彼ならああいった音楽も大丈夫だろう」と演奏の幅が広がる。仕事が増える。ようはしたくない音楽も演奏する機会が増えるということです。だからといっていやいや演奏はしませんよ。プロですから。勉強だと思って演奏するのです。実際勉強になるし。それは心がこもっていないじゃないか!ある意味そうかもね。
ヒット曲を持っている歌手がいるとします。何万回と歌うわけです。もう完全に自分のものです。そうなると飽きてはいても手を抜くなんてことはありません。なぜかというと手を抜くほうが技術的に難しくなるのです。だいたい手を抜くというのは音楽家にはありえないと私は思います。音楽が始まってしますと全力を尽くしてしまうように身体が頭がなってしまっているのです。
これは説明のしようがありませんが。一度演奏していた仲間から手を抜いていると言われたことがありますが、私はそんなつもりはありませんでした。振り返って考えてみると共演していたドラムが気に入らなかったのでやる気がうせてしまって頭にきたまま弾いていたのです。言い訳になるのかもしれませんが、セッションで気持ちの通じない方と特にドラムですが、一緒にやるのは苦痛です。フロントの方はいわば歌手といっしょなわけで、リズムセクションは理論的に伴奏です。伴奏が良くないと面白くないのでしょうね。私はジャズはそんなもんで常にいい状態にはなりえないものだと思ってますけど。
私はプロがいいよとは絶対言いません。プロは止めとけとは言います。
好きな演奏をすることを貫くということは物凄いことです。茨の道。死んだほうがましです。
でもまれにいるでしょうね。好きな音楽を好きなときに好きなように演奏してプロでいることができる人。こういう人を探し出して言ってほしいですね。「好きな音楽を職業にできていいですね」。